日本のゲーム会社での経験、「メトロイドヴァニア」系ゲーム、インディーゲームのデザインとワークフロー、東京で暮らす事について話します
まず、このインタビューはこれまで行ってきたインタビューとは内容的に異なっているように見えるかもしれません。最終的にこのサイトのフォーカスは「日本の」インディーゲームですが、これは実際どういう意味なのでしょうか。日本「で」作られたゲーム?日本人「によって」作られたゲーム?もしかしたら美的スタイルが違う?ゲームメカニクスの違い?過去に書いたように、海外のゲーム開発の現実は答えるのが難しく、おそらくこれらのゲームを作った人の数だけ答えもあるのでしょう。 このインタビューはこの質問に答えるわけでもなく、それに関係なく、日本でゲームを作る非日本人デベロッパーが増えれば増えるほど、彼らがどう考えるのかを見ていくことは重要だと考えます。
Neo Future Labsとのインタビュー
インタビューを行った年月:2018年12月 インタビュー: シュールズ・ダグラス (Douglas SCHULES) 翻訳:下崎哲也 校正:東郷生志 Read in English Daedalus Machine まず、ご自身とNeo Future Labsについて教えてください。 Max Preston, CEO of Neo Future Labs 私はもともとカリフォルニア州の出身なのですが、カリフォルニア大学バークレー校でコンピューターサイエンスを学んだ後、日本に1年間留学しました。私はハードコアゲーマーですので、留学中に様々なゲーム会社に応募し「悪魔城ドラキュラ」や「幻想水滸伝」「メタルギアソリッド」の大ファンだったので最終的にKONAMIに決めました。とてもわくわくしました。 2010年にKONAMIで働き始めてすぐに小島プロダクションに配属され、「メタルギアソリッドV」 と「Fox Engine」のプログラムを担当しました。2016年にKONAMIを退社し、そのまま東京でNeo Future Labsを設立しました。現在は自社タイトルである「Hammer World」を開発しています。 Daedalus Machine 大学卒業直後にも関わらずとてもいい仕事に就かれましたね。KONAMIではどんなプロジェクトに携わり、どんな仕事をされたのでしょうか。 Max Preston 小島チームは「Fox Engine」という独自に開発したエンジンを持っており、そのエディタとナビゲーションシステムのプログラムを担当しました。 「メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ」では敵の様々なAI挙動を実装し、「メタルギアソリッドV ファントムペイン」では様々なNPCとボス戦(イーライ、燃える男、など)を実装しました。そして、「メタルギアソリッドオンライン3」ではゲーム内のいくつかのUIをプログラムしました。 Daedalus Machine KONAMIで働くのはどのような感じでしたか? Max Preston 才能があり、クリエイティブで仕事熱心な多くの人々と一緒に、同じ一つの目標に向かっていくという環境はとても素晴らしいものだと思いますし、大学卒業してすぐの仕事でしたので、私にとって間違いなく重要な経験でした。6年以上働いたのですが、ゲームデベロッパーとして大きく成長し、日本語もかなり上達しました。 Daedalus Machine ご自身のその仕事の経験はどれくらい一般的なものだったと思いますか。日系企業で働きたいという人は他にもいると思うのですが、何かアドバイスがありますか。 Max Preston おそらく私の経験はそれほど一般的ではないと思います。というのも、業界の中でも特に最高の品質を求められるプロダクションであり、決して一般的なチームでもプロジェクトでもなかったからです。日系企業で働くということについてお話する事より前に、海外の人が言うには「クレイジーな人だけがゲーム業界を選ぶ」とよく聞きます。低賃金な上、プロジェクトは白紙になったり、非現実的な締め切りを追われるなど修羅場が多いとよく聞きます。確かにプログラマーとしては、IT企業や大きな銀行で働いた方がおそらくより安定したキャリアパスにはなると思いますが、難題に取り組んで自分のクリエイティビティを試したいのならばゲーム企業の方が満足度が高いと思います。ストレスが溜まることは多いですが、開発に退屈する事はありません。燃え尽きない人は、情熱的で粘り強い人が多いようです。 日系企業ではチームや組織がそれぞれ違うのでルールよりも例外の方が多いです。日系企業で働く場合、共通語は日本語なので、日本の労働文化の中で働くことになります。言語については、頑張れば仕事をしながら学ぶことはできますが、事前に学んでおいたほうがより良いと思います。日本人でも知らないような、企業で働かなければ学べない業界用語もたくさんあります。日本の組織でやっていきたい外国人で、日本文化に馴染みたいと思うなら、日本の風習をよく観察し、成り立ちを勉強する意識が大事だと思います。 もし日系企業で働きたいのであれば、その会社のWebサイトに行って直接応募するといいでしょう。 ![]()
Daedalus Machine
Hammer Worldのプロジェクトについて、このゲームとその背景について教えてください Max Preston 「Hammer World」は基本的には物理法則に基づいた近接攻撃で戦うFPSの「メトロイドヴァニア」系アクションゲームです。ゲームの焦点はワールドの探索と戦闘となっていますが、ゲーム自体は奇妙な世界を舞台にしたオープンワールドになっています。様々な新しい要素がありますが、現時点では秘密にしておきたいと思います。 Daedalus Machine このゲームをメトロイドヴァニアタイプのゲームだと表現されましたが、個人的にどういった点がこのジャンルの特徴なのか、またなぜそう思うのかについて教えてください。 Max Preston 正直、Hammer Worldをメトロイドヴァニアに分類していいものかどうか答えが出せていません。というのも、このジャンル分けははっきりと区分できるものではないと思うからです。私の見方としては、「スーパーメトロイド」や「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」の要素を多く持てば持つほど、「メトロイドヴァニア」に分類されると思います。 その主要な要素を挙げると、
最近ではメトロイドヴァニアファンの間で「ダークソウル」「ゼルダ」「メトロイドプライム」や、その他のアクション・アドベンチャーゲームがメトロイドヴァニアジャンルに該当すべきかどうかについて議論になっているのを見た事がありますが、明確な答えは出ていないようです。Hammer Worldの場合は、ノンリニアで相互に繋がった世界があり、ロックを開放して進むという点で、メトロイドヴァニアジャンルに強いつながりがあるのではないかと思っています。しかし、このゲームはあまり見かけないFPS視点であり、しかも「スーパーメトロイド」や「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」とは全く違う雰囲気なのでメトロイドヴァニアファンには受け入れられない可能性があります。新たなジャンル名を付けると良いかもしれません。当時は単にアクション・アドベンチャーゲームと呼ばれていましたが、より良い呼び方があるかもしれません。 どうあれ私は「スーパーメトロイド」や 「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」「ラ・ムラーナ」をはじめとするメトロイドヴァニアのジャンルが大好きなので、Hammer Worldのユニークな要素によってこのジャンルの可能性が広げられたら良いと思っています。 Daedalus Machine どのようにHammer Worldを同ジャンルのゲームと差別化しているのですか。 Max Preston そもそも3Dでメトロイドヴァニア系のゲーム自体が少ないですし、ファーストパーソンのものはほとんどありません。パッと思いつくのは「メトロイドプライム」くらいなので、今私たちは新たなジャンルを開拓しているような状態です。メトロイドヴァニア系ゲームの多くは近接攻撃のスタイルを採っていますが、FPSの視点での成功例はほとんど見られません。Hammer Worldの特筆すべき点は物理法則に基づいた近接攻撃のシステムを採用している所にあります。このシステムにより、敵を崖から落としたり、他の敵や地形のオブジェクトに投げつけたりすることで、さらなるダメージを与えたり、様々な効果を発動できたりするので、戦略の幅が広くなります。 ![]()
Daedalus Machine
いくつかもっとお聞きしたい点があります。まず、メトロイドヴァニアのジャンルについてですが、美的な部分とメカニクスの両方に言及しているというのが興味深いと思いました。大半のゲームジャンルは、単にメカニクスとゲームプレイで分類され、ゲームの美的デザイン、いわば「雰囲気」には注目されません。ゲームを分類する際に「雰囲気」はどんな役割を果たすのでしょうか。また、そういった考え方は広がっていくべきでしょうか。 Max Preston 「雰囲気」は、プレイヤーが違和感なく没頭できるような必然性とリアリティのある世界を作り出す上で重要で、よくできた雰囲気というのは目に見えない深みをゲームに与えます。とはいえ、雰囲気とは、ゲームを構成するすべての基本要素とシステムから生まれる副産物ですので、ゲーム内の全ての要素がお互いに矛盾せず調和するかどうかで、雰囲気が出るか壊れてしまうかが決まります。 「スーパーメトロイド」は非常に良い雰囲気を持ったゲームだと思います。全ての要素がうまく絡み合っているので、まるでミステリアスな生物の惑星を探索しているように感じ、ビジュアルスタイルにうまく調和したサウンドスケープは、見えるもの以上の深い何かを感じさせてくれます。それらは一般のビデオゲーム以上に、リアルの世界にいるような没入感を感じさせる新たな側面を与えています。 ですので、より多くの開発者が、深い没入感を実現できるように内部的な必然性を高める努力をするようになると素晴らしい事です。しかし現実には、雰囲気を壊すようなテキストや雰囲気に合っていないテキストのために、ゲーム全体の雰囲気が台無しになることがよくあります。ゲームにダイアログを入れる際に、優秀なライターがプロジェクトにいない場合は慎重にすべきです。
Daedalus Machine
ゲームの雰囲気を作り、維持することは簡単に聞こえますが、実際は難しいと思います。組織的な視点から見て、プロジェクトの統率が取れていることが必要不可欠であると思うのですが、ご自身の経験から何が必要だと思いますか。 Max Preston 組織的な視点から見ると、ゲーム内の全ての要素の必然性を維持し、開発と平行して雰囲気を保つのはディレクターの仕事です。その為には、ディレクターのビジョンとメンバー全員の認識を一致させることが重要になります。従って、新しいストーリーやゲームの要素をどう追加すればゲームの世界観に違和感なく馴染むのかをよく考慮する必要がありますし、場合によってはその要素を追加すべきかどうかを再検討すべきです。たとえ面白いアイデアであっても、ゲーム全体の影響を考えずに簡単に追加するのは危険です。 Daedalus Machine これまでに関連して、確かに先におっしゃっていた基準を満たす3Dのファーストパーソンのゲームは、特に探索の側面ではほとんどないと思います。PS2やPCプラットフォームについていえば、ファーストパーソンの視点というのは一般的に「DOOM」や「ダガーフォール 」などといったFPSやRPGにしかなく、探索要素のあるゲームの大半は肩越しの第三者視点でした。思いつく例で言えば「レガシー・オブ・ケイン」 や 「ソウル・リーヴァーシリーズ」、「ダークサイダーシリーズ」も当てはまるかもしれませんね。「キャッスルヴァニア: カースオブダークネス」でしたっけ?も似たようなことをしようとしていた気がします。 あとはもちろん「ロードオブシャドウシリーズ」ですね。 とにかく、この分断についての考えをお聞きしたいです。ありふれた意見ですが、私は3Dの メトロイドヴァニア系ゲームを他に見ない理由はただ業界がそれを試すのに乗り気ではないからだという気もするのですが。 Max Preston 「レガシー・オブ・ケイン:ブラッドオーメン」 は素晴らしいゲームでした。ほぼメトロイドヴァニア系ですがトップダウンの視点と単体のダンジョンという点で「ゼルダ」の方に似ているかもしれません。ゲーム名をいくつか挙げていただきましたが、ゲームのマップ構造もメトロイドヴァニアの大きな構成要素の一つに加えられると思います。というのも「スーパーメトロイド」も「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」も、様々なゾーンに分断された部屋が互いに繋がる事で一つの大きなマップを構成しています。それと比べると、ゼルダのゲームは広大な野外マップの中に、独立した多くの町や、内部的に繋がっていない単体のダンジョンがあるという構造を採用しています。また「ロードオブシャドウ」や「ゴッドオブウォー」などのゲームは基本的に一本道(分岐はあっても寄り道程度)でマップ毎に分断されている傾向にあります。 さらに言うと、メトロイドヴァニアの一つの特徴として、プレイする毎にプレイヤーの意思によってゲームの進み方を変える事ができる点にあります。これは一本道のゲームには無い構造です。この構造により、何度でもプレイできる自由度がプレイヤーに与えられるのです。この事により、上手なプレイヤーによって、もともと想定されているゲームの進め方が完全に覆されることがあります。例えば「スーパーメトロイド」の逆ボス順スピードランは極めて優れていると思います。 しかし現実には、業界の中での試みはあまりなされていないようです。ここでゲームはビジネスなのか芸術作品なのかを考えてみましょう。一般的にはクリエイティブな人はリスクをとって新しいことに挑戦したいですし、投資する立場の人は基本的にリスクの無い安定したものを望みます。特に、制作に莫大な金額がかかる場合、クリエイティブなチャレンジはリスクとして見られ、過去に成功した同じようなタイトルになりがちですが、それこそが現実的に高いリスクになると私は考えます。人々は目新しさを求めますし、市場が同じようなゲームばかりであふれてしまったら誰も幸せにならないでしょう。 Daedalus Machine 「メトロイドプライム」についてですが、MP4についてはどうお考えですか。 Max Preston しばらく「メトロイドプライム」をプレイしておらず、まだMP4についての実際の情報を見ていないのですが、どうなるのか楽しみにしています。私としては、「スーパーメトロイド」のゲーム世界観と雰囲気で制作して欲しいです。シナリオ重視よりは、ゲームプレイと世界観を重視したものになったらいいなと思いますが、そのうち分かるでしょう。 Daedalus Machine Hammer Worldのメレーコンバットは物理法則に基づいているともおっしゃっていましたね。それについて、特に同じような他のゲームと比較して、ゲームプレイという点でそれが何を意味するのかについてもう少し詳しく教えてください。 Max Preston 本質的にゲーム内のキャラクターの多くの動きと行動は従来のアニメーションでなく物理計算により制御しています。ゲームの完成が近づいたらゲームプレイ映像を公開する予定です。 Daedalus Machine 他にHammer Worldの開発に影響を与えたゲームは何かありますか。 Max Preston 間違いなくメトロイドヴァニアの代表作である「スーパーメトロイド」と「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」などから影響を受けており、それらが持つ、探索・成長・マップ構造、を継承しています。また、間違いなく「ダークソウル」と「マリオ64」の要素も混ざっているでしょう。私は、昔のFPSゲーム、特に「アンリアル」 (1, 2, 2k4 など)のファンでもあるので快適でしっかりとした操作感を目指したいですが、内部のシステムとのバランスにより、少し違ったゲームになると思います。 Daedalus Machine 開発する上で最も難しかった課題は何でしたか。また、どのようにしてそれを乗り越えましたか。 Max Preston 実装にはいくつかの苦労した点があり、特に物理システムの実装が大変でした。しかし最も苦労したのはコンセプトについてです。プロジェクトとしてゲームシステムと世界設定に新規性を入れようと考えていました。これは典型的なファンタジーやSFではないので、ゲームの雰囲気やトーン、音楽やアートスタイルについて新しい事をいろいろ試しましたが、そういった新しい要素と既存の一般的な要素を共存させるのが難しかったです。一般的に、参考にできる物はほとんど無く、何でもできてしまうとまとまらないものです。それはまるで、ある日突然壁が破れ進めるようになるまで頭をぶつけ続けるようなものです。 とはいえ、探し求めていたコンセプトを最終的に発見したとしても、それが満足いく形になるまで磨き続ける事が必要です。このことは、難しいコンセプトを実現する為の唯一の方法は、単純に長い時間をかけて探し求める事を意味します。ありがたい事に、素晴らしいチームに恵まれ、様々な問題の解決に至る事ができています。 Daedalus Machine もしチームがゲームのミームを作るとしたらどんなものになるでしょう。 Max Preston 何をもってミームとするかはファンに委ねたいと思います。 Daedalus Machine チームはどれくらいの大きさですか。また、誰がどんな役割を担っているのでしょうか。 Max Preston 小さなコアグループですが、役割は明確に分けていません。メンバーのスキルに応じて、その時点で適切な人にタスクが割り振られます。 Daedalus Machine ご自身のデベロッパーとしての経験について教えてください。東京をベースにご活動されていましたよね? Max Preston はい。開発する環境は必ずしも東京と他の場所で異なるわけではなく、主にチームやプロジェクトに依存します。とはいえ、東京はゲーム開発に適している場所だと言えます。東京にはゲーム業界で働いている人が多くおり、優秀な人材もたくさんいます。もしあなたが日本のアートが好きで、ビデオゲームや他のクリエイティブなプロジェクトを作りたいならば、日本の素晴らしい沢山のアーティストとチームを組む事もできるのです。 そしてさらに東京は、食べ物や治安の良さ、交通の利便性が優れています。特に、電車が充実しているのでどこへ行くにも歩いて行けるし車もいらないというのはとても良い環境です。 Daedalus Machine そうですね、でも家賃を抑えようとして遠くに住んでいる場合は移動時間の長さが大変になることもありますが、Neo Future Labsは皆が通勤するようなオフィスがありますか。もしくは、コワーキングスペースを活用しているのでしょうか。 それとも、アメリカで言う「誰かの家のガレージで働く」ような感じなのでしょうか。 Max Preston チームは東京を拠点にしています。普段は各々が個人で開発しており、必要な時には集まります。 Daedalus Machine 日本に来てどれくらいになりますか。 Max Preston 東京に住んで10年になります。留学生として1年、その後KONAMIで6年働き、今はインディの開発をしています。 Daedalus Machine 近頃日本国外からのゲームデベロッパーが増えてきているようですね。コミュニティに多様性を持たせるという点でいいことだと思いますが、日本に来たばかりの人がどのような問題に直面すると思いますか。 Max Preston 複雑な言語を話す国に移住すると、普通に生活を整えるだけでも大変だと思います。住む所を探すことや引っ越し、銀行口座を開設したり、大家さんと連絡を取り合ったり、電気・ガス・水道の契約をしたり、洗濯機の説明書を解読したりなど、初めの頃はそういった事に苦戦すると思います。こういった問題は、自分で頑張るか日本語を話す友達がいれば、たいてい解決できます。 しかし、おそらく最大の、時に乗り越えられない問題は就労ビザを取ることだと思います。短期間なら観光ビザや学生ビザ(あるいは国籍によってはワーキングホリデービザ)なら入国はできますが、長期的にみた時にはコストがかかりますし、残念ながらそのビザで働くことはできません。しかし、長期滞在するには、フルタイムの社員として中規模の企業や大企業に入社し、会社側に適切なビザを取るための法的書類事務を全部やってもらうのが一般的です。ですから、もし日本に住みたいのであれば、ビザについて今すぐ調べることをお勧めしますし、また日本の会社で働きたければ会社についてすぐにでも調べ始めるとよいでしょう。私が知る限り、一人でインディゲームを作るためだけに滞在できる種類のビザはないので、インディゲームを開発したいのであれば、大きい会社に入るか、持っているビザでできる事をパートタイムでやるかだと思います。 Daedalus Machine ここで日本で暮らす上でよく聞かれる日本語能力についてお聞きしたいのですが、ご自身の言語的なバックグラウンドを教えてください。 Max Preston 私は日常会話もビジネスレベルの日本語も今ではかなり流暢になったと思います。日本に来る前には1年くらいしか勉強してませんでしたが、今になって思えば日本に来る前に勉強した文法の基礎が、日本に来てから学んだすべての日本語を覚えるための重要な土台となりました。ひらがなとカタカナ、いくつかの基本的な漢字の知識も前もって知っておいて良かったと思います。あとは、なんとなくずっと見ていた英語字幕付きのアニメも、言語に関する勘を育てるのに役立ったと思っています。 また、日本の大学に留学中、部活に参加したり、就職活動に奮闘したり(申込書を書いたり、暗号のような文書を読んだり、面接の練習をしたり)することで、かなり上達したと思います。そして外食するときにはいつでもレストランのメニューを解読しようと努力を惜しまなかったことも読解力をあげるのに役立ったと思います。 しかしながら、6年間日本企業で働いた事が日本語能力に一番大きい影響を与えたと言えます。働き始めた頃はビジネスコミュニケーションの能力はとても低かったのですが、3年経つと会議での要旨をつかめるようになり、少し貢献できるようにもなりました。そして5年経つと日本語能力もかなりしっかりとしたものになりました。特に役に立った事は、自分の受信トレイに入った会社のメールをすべて理解する為に相当の努力を費やし、また適切な返信をすることを心がけた事です。どんな文脈でも同じ言葉を何度も使っているこにと気づき、それらの単語をいくつか調べただけでその文脈のコミュニケーションの全体的な理解度が劇的に上がる事が分かったのです。 Daedalus Machine メールの件に関しては気を付けてないと時間の無駄になってしまいますが、それは本当にそうですよね。日本で働きたいと思うインディデベロッパーにとってどれくらいの日本語が必要だと思いますか。また、日本語を学ぶにはどういうリソースがあるでしょうか。 Max Preston 外国人同士の中だけに留まり、日本語を話さなければならない状況を意図的に避けていれば、日本語はそこまで必要ではありませんが、そうすることで日本語に接する機会と経験を逃す事になるかもしれません。もし日本に住んで働きたいなら、毎日少しずつ時間をかけて日本語のスキルを磨くことは非常に大事なことです。長い時間をかけてコツコツ学んだことは最終的に結果が出ます。早く始めれば始めるほどいいと思います。 日本にいると日本語を訓練する機会は無限にあります。おそらく日本語の環境に身を置き、鍛錬するということが最も効果的な学習方法だと思います。日本の会社で働いたり、日本のグループ活動に参加してみたり、近所のレストランの常連になったり、日本語の文学を読んだり、日本語でメールを読み書きするなど、それら全てが日本語を上達させるのに最適な方法です。分からない単語を何度も調べている内に自然と覚えてしまうものです。 とても使えるツールとして取り上げたいのは、Firefox (Chromeでは Rikaikun)のアドオンであるRikaichamp (Rikaichan)です。これにより知らない単語の上にマウスを置くとその読みと意味を表示してくれます。これを使うとメールやウェブサイトの内容をより素早く正確に解読することができます。ALCというサイトも分からない単語がどう使われているのか調べたり、例文を探したりするのにとても便利です。 Daedalus Machine 東京のゲーム開発コミュニティについてですが、どんなものなんでしょうか。 Max Preston 東京にはいくつかのゲーム開発コミュニティがあります。例外もありますが、大きな会社の開発者の多くは交流会にあまり顔を出さないようです。たぶん自分の友人や同僚と時間を過ごしているんだと思います(それか働いているだけかも?)。一方で、インディ開発者は様々なイベントによく参加しているようです。ゲーム開発とお酒をたくさん飲む事には相関関係があるような気がするのですが、もしかしたらそれは東京特有の文化かもしれませんね。 Daedalus Machine 東京ゲームショウ(TGS)やビットサミット、デジゲー博といった大きなイベントは広く知られていると思います。国内で他に何かデベロッパーにおすすめのイベントはありますか。 Max Preston 日本語を話せるのなら、CEDECは中規模のGDCのようなカンファレンスで、優れたセッションを聞くことができます。TGSも行ってみる価値はあると思います。TGSが主催するインディーゲームコーナーがここ数年で大きく拡大されました。京都のビットサミットはとても素晴らしく、私が見た大きなイベントの中ではベストです。デジゲー博とTOKYO SANDBOXもいい感じのインディーゲームイベントです。 他にも東京にはインディゲームデベロッパーが集まるとてもいい交流会があります。私のお気に入りは月1で渋谷のFabCafeで開催される東京インディーズで、他の開発者と会って、どんなゲームを開発しているのかを知ることができます。 吉祥寺のPico Pico Cafeで行われるピコタチもいろいろな面白いプレゼンがある小さくて良いイベントです。 新宿には、インディがメインではないですが、GameDevDrinkUpというおもしろいイベントがあります。 Daedalus Machine TGS 2018で出展した時の話を教えていただけませんか。 Max Preston はい、TGS 2018のインディーゲームコーナーでHammer Worldを出展しました。実はHammer Worldを一般に公開したのはこれが初めてでした。そこでは、コントローラーをつないだパソコンを2台設置して最初のエリア「きのこの世界」をデモプレイできるようにしました。全ての準備がギリギリになってしまってプレスリリースを送る余裕もなかったので、木曜日と金曜日(ビジネスデイ)にはほとんど友人や元同僚しか来ませんでしたし、プレスの人達も私達の存在にすら気付いていなかったと思いますが、ジャーナリストが数人寄ってきてくれました。それでも、土曜と日曜(一般公開日)には私たちのブースの体験機はショウの間中ほとんどずっとフル稼働でした。FPSに慣れていない数人の人達はすぐ諦めてしまいましたが、大半のプレイヤーは楽しんでいたようで、かなりの人が比較的難易度の高いデモを最後までプレイしてくれました。出展を見に来た人たちが私たちのゲームをプレイして、試練を乗り越えながら楽しんでいるのを見るだけで最高の気分でした。その結果、私達はゲームのキーコンセプトがしっかりしている事を確かめる事ができたし、質の高いゲームを完成させる事ができれば、多くの人が楽しめる商品になるという自信ができました。また、TGSでポスターを900枚、チラシを2000枚配布できたので宣伝についても幸先のいいスタートを切れたと思います。 Daedalus Machine 開発についてはどのようなスケジュールでしょうか。また、どのプラットフォームをサポートする予定ですか。 Max Preston 十分なレベルのクオリティで完成するまではHammer Worldをリリースするつもりはありません。宮本茂氏の言葉を引用すれば、「期日に遅れたゲームは最終的には良くなるが、急いで作ったゲームは良くなることはない」 ということですね。(それでも1~2年で完成できることを祈っています!) まずはSteamでHammer WorldのPC版を、その後プレイステーション4とニンテンドースイッチでも公開する予定です。他のプラットフォームも今後決定する予定です。 それまでは、Steamのウィッシュリストに「HAMMER WORLD: DIMENSION TRAVELER」と追加するか、ツイッターで@neofuturelabs をフォローしてもらえればゲーム開発の最新情報がチェックできます!
0 Comments
Your comment will be posted after it is approved.
Leave a Reply. |